樽見鉄道は,国鉄樽見線(大垣-美濃神海)が第1次廃止対象特定地方交通線として1984年10月6日に廃止されると同時に,第3セクター方式として同線を引き継いだ鉄道です。 当時,既に神海〜樽見の工事もある程度進んだところで工事が凍結されていましたが,第3セクター転換後に工事が再開され,1989年3月25日に延伸開業しました。
本巣駅から貨物専用線で結ばれた住友大阪セメント岐阜工場のセメント輸送が樽見鉄道の営業収入で大きな割合を占めていたそうです。
旅客輸送はレールバスが主体ですが,朝の通学輸送では客車列車も本巣〜大垣で1往復運転されていました。 また,沿線には桜の名所も多く,春の観桜シーズンには「桜ダイヤ」で大垣〜樽見を客車列車が数往復運転されていました。 かつてはJRから直通列車が運転されていたこともあるそうです。
しかし,2006年3月をもって住友大阪セメント岐阜工場が鉄道によるセメント輸送を止めることになったため,樽見鉄道の貨物輸送も終わることとなると同時に, 客車列車の運行も終了することとなりました。
ここでは2003年と2005年から2006年にかけて何度か樽見鉄道を訪ねて記録した客車列車と貨物列車をご紹介したいと思います。
2003年4月13日(日)に谷汲口駅付近と木知原(こちぼら)〜谷汲口の間で撮影しました。 沿線の桜も満開に近かったこの日は天気も良く,観桜客で各列車は混み合っており,客車列車が大垣〜樽見で2運用4往復,レールバスも重連で運転されていました。
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2005年の桜ダイヤのときには「うすずみファンタジア」編成は既に運用離脱。 そのため,客車列車は14系が2両と3両に分割されて2運用を確保,しかし運転本数も2運用合わせて3往復に減少。
4月7日(木)に貨物列車も狙える本巣以南で撮影。 しかし桜はまだつぼみ,平日であるうえに雨が降っていたためレールバスは単行で運転。 客車列車として設定されていた列車のうち1運用2往復分もレールバス単行。 客車列車は14系3両編成の1運用で大垣〜樽見1往復+本巣〜大垣の回送1往復と寂しい運転状況。 貨物列車は牽引機が重連だったのが救いでした。
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2005年の桜ダイヤのときには悪天候で貨物列車も思い描いていたよいうに撮れなかったので,夏に18きっぷで再び樽見鉄道へ。
7月28日(木)は雲ひとつない絶好の撮影日和。背景がすっきり,長い編成でも綺麗に見通せる十九条駅の少し北で撮影。 ところが,この日の552列車はセメントタキがわずか6両で牽引機はTDE10 1の1両。長い編成を重連が牽くシーンを思い浮かべていたので,少々拍子抜け。
この後は住友大阪セメント岐阜工場(以下,工場)から本巣への専用線を撮りに本巣へ移動。 樽見鉄道の下り貨物551列車が本巣に到着するしばらく前の12時45分頃に工場から専用機D101号車が単機で姿を現し,本巣駅手前でしばらく待機。 工場から出荷される日であればこのときにタキが牽引されてきて,翌日の樽見鉄道上り貨物552列車の荷となるのですが, 木曜日は出荷がない日なので単機でやってきたのでした。
12時35分頃に551列車が到着するとカマが付け替えられ,D101号機牽引で工場へ向かいます。
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樽見鉄道貨物列車最後の冬は全国的に雪が多い年で,大垣あたりでもかなりの積雪があり, 樽見鉄道でも神海〜樽見で除雪が追いつかず,12月下旬から1月上旬にかけて運休となっていたようです。
12月20日(火)は数日前に積もった雪で真っ白な世界にきれいに晴れ渡った絶好の撮影日和。 今回も十九条駅の少し北で撮影。 この日の552列車はセメントタキ15両をTDE102+TDE113の重連が牽く堂々たる編成。 文句なしのシチュエーションに文句なしの編成でした。
この後は東大垣まで乗車し,横屋との間にある揖斐川土手へ。ここは樽見鉄道とJR東海道線の橋梁が至近距離で渡っているところ。 ここでJR貨物5973レと樽見鉄道下り貨物551レを撮ることにします。 JR貨物5973レは,稲沢から本巣の住友大阪セメント岐阜工場行の返空セメントタキを大垣まで担当し,大垣から樽見鉄道551レがタキを引き継ぎます。 逆に5973レを担当したカマ(EF66)は樽見鉄道552レからのセメント積載のタキを引き継いで折り返し稲沢まで5974レとなります。 大垣で樽見鉄道とJR貨物の荷を交換する形です。
この日は下りもタキ16両と撮り応えのある編成。 この後も新鶴見区のEF65が牽くホキ貨物など,成果の多い1日でした。
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樽見鉄道の客車列車と貨物列車の最後の春。
客車列車の末期は14系2両編成をTDEが牽いていましたが,一足早い3月4日(土)が最終日となりました。 残念ながら,桜ダイヤ以外の通学列車としての客車列車の姿を記録することはできませんでした。
客車列車最終日の翌日,3月5日(日)に東京からの「ムーンライトながら」で早朝に大垣着。本巣へ向かいます。 本巣駅の側線には営業を終了した14系客車2両と並んでセメントタキ26両編成が留置されています。 これで貨物列車が運転されることを確認できました。しかもこの長さなら確実に重連です。
駅横の機関区に留置されていたTDE11 3とTDE10 5の大垣寄り前面にそれぞれ「惜別貨物列車」・「さようなら貨物列車」のヘッドマークが掲出されているのを発見。 密かに期待していたことが現実のものとなっていて来た甲斐がありました。
今回は本巣駅の南方でヘッドマーク付552レを捉えました。 前年夏・冬とは場所を変ましたが,雰囲気はあまり変わりませんね。 でも今回はヘッドマークが彩りを与えてくれます。
日曜日の返しは荷が無い筈なので,タキをJR貨物5974レに引き継ぐ様子を見るために大垣まで戻ります。
大垣に着いたときにはすでにTDE重連は切り離されて7番線で,タキ26両はその隣の側線で待機中。 5973レのスジで新更新色EF66の41号機が単機で到着します。 一旦,5番線に到着後に入換運転でタキに連結。
その後,TDE重連が551レのスジで本巣へ帰って行きます。 樽見鉄道レールバスとTDE,そしてJR貨物のカマが,このように大垣で1枚の写真の中に納まるのも間もなく見られなくなる光景となってしまいます。
5974レ出発時刻が近くなったところでいったん5番線へ入換。そして稲沢へ向かいます。
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2006年の観桜シーズンは機関車・客車を使用できないため桜ダイヤは実施されず, 通常のダイヤに臨時列車1往復の設定と一部列車をレールバス2両に増結するだけとなったとのこと。 さらに4月21日にダイヤが変更されます。新駅が開業する一方で列車本数は大幅に削減。 収入で大きな割合を占めていた貨物の廃止により運営コストを削減する必要があったためと推測しますが, 列車本数削減→利用者の減少→経営悪化によりさらに減便・・・という悪循環に陥らないことを願います。